聲の形(声の形)感想「君に生きるのを手伝って欲しい」(ずっと伝えたかった)恋愛と自己嫌悪 aiko新曲
–追記2016/10/06—-
Contents
- 1 『感動ポルノ』(障害者という設定で無理に感動を作る手法)ではない。
- 2 公開から17日間で、観客動員が100万人、興行収入は13億円120館の公開の作品としては異例のヒット
- 3 この作品に触れた人は、痛みと感動を両方感じずにいられません。
- 4 読者を冷静にしておけない漫画なのです。
- 5 「君に生きることを手伝って欲しい」
- 6 自己嫌悪に苦しみ、自己肯定どころか、自己受容すらできない、主人公が想いを寄せる言葉の不自由なまま懸命に人との繋がりを求めて生きる彼と彼女。
- 7 自己嫌悪を抱えたまま、他人に嫌悪感を持たないことはできません。
- 8 「自分を愛せない人は、他人を愛することができない」
- 9 牛尾憲輔。agraph名義でのソロ活動が高い評価を受ける電子音楽家。
- 10 主題歌 aiko 「恋をしたのは」(ショートバーションMV公式ネット公開版)リンク
- 11 【aikoインタビュー】映画『聲の形』の主題歌「心の底にある絶対変わらない愛の歌を書きたかった」
- 12 君の名は。
- 13 君の名は。(辛口評価)”RADWIMPS”(再生回数ベスト40掲載):”おあいこ”じゃすまない”おしゃかしゃま””ふたりごと””有心論”の感性は”前前前世”から?カラオケまで制覇
『感動ポルノ』(障害者という設定で無理に感動を作る手法)ではない。
という批判がありました。内容をよく見れば、その批判は、的外れなのではないかと思います。聴覚障害ということで、現代の思いが伝わりにくいことで生じる問題を表現したかったというように見えるからです。
公開から17日間で、観客動員が100万人、興行収入は13億円120館の公開の作品としては異例のヒット
君の名は。との比較
君の名は。は296館で公開されています。
『君の名は。』公開開始8月26日から10月3日までの39日間
観客動員 1,000万人
興行収入 130億円
公開期間と、公開劇場数から補正しても、『君の名は。』の方がヒットしてますが、それでも、『聲の形』は、暗い、問題のある題材を暑かったことで、話題も、tweetもしにくかったであろうに、この結果ということは、作品の内容自体への感動の度合いは、『君の名は。』に負けてないとことも推測されます。どちらも良いです。
—追記終わり———————————
聲の形(声の形)は、人気漫画で、2016年9月17日アニメーションが公開されました。
この作品に触れた人は、痛みと感動を両方感じずにいられません。
登場人物達が具体的に自分の友人、知人、自分の中にもある、心の醜い部分と美しい部分の両方を思い出させる丁寧な描写がされているので、
自分が人を傷つけた経験、人から傷つけられた経験、孤立した経験、いじめた経験、いじめられた経験、
それでも、本当はある人との繋がりを強烈に求め、その人に自分の心の奥の思いを伝えたかったのに伝えられないままだった思い。
それらを心に甦させざるをえない漫画で映画なのです。
ですから、漫画の時の評価もネット上で論議を呼び起こしました。
読者を冷静にしておけない漫画なのです。
主人公は人を傷つけた、いじめた過去を後悔して、自分を責め、すっかり心を閉ざし、自殺未遂までします。
ただその前に、その傷つけた耳が不自由な少女に許しを請うように会いに行きます。
その少女のあまりに無垢な優しさ、そしてその少女も障害を持ち頑張りながらも人とうまく心を通わせられれず、傷つき心を痛めています。
ところがそれでも、ひたすら人に精一杯優しく接して、自分が悪くなくても謝ってばかりいるのです。
これでは自分の心が傷んで生きる希望を失ってしまいます。
そんな究極の純情な恋愛を軸に物語は展開していきます。
タイトルに書いた、
「君に生きることを手伝って欲しい」
とは物語のラストシーンで、主人公が少女に言うセリフです。
自らの生きる意味を見失いがちな少女はこの言葉を自分の生きがいと感じたでしょうし、主人公もこのセリフを半分は彼女を思っていったはずです。
ですから、「君に (誰の?僕の?彼女の?)生きる手伝いをして欲しい」 カッコの中の誰の生きる手伝いかは、語られてないのだと思いました。
自己嫌悪に苦しみ、自己肯定どころか、自己受容すらできない、主人公が想いを寄せる言葉の不自由なまま懸命に人との繋がりを求めて生きる彼と彼女。
二人は、お互い関係の中に生きる意味を見出そうとします。一人ではそれを見いだせなくなっていても、相手のために何かをしようとすることで、力を得ることができることを二人は理解していきます。
ここまでボロボロに自分が痛みを覚え傷ついているのに、他人に優しくしようとすることが、その心の美しさが、読者の観客の心を大きく動かさずにいられません。
ただし、人間は、感情について、しばしば、対象物を固定できません。感情は自己と他人を心の深いところでは判別できなくなるのです。
自己肯定できないまま、本当の意味で、他人を肯定することはできません。
自己受容できないまま、本当の意味で、他人を受容することはできません。
自己嫌悪を抱えたまま、他人に嫌悪感を持たないことはできません。
この漫画と映画では、そこまでの話はされていませんが、もともと、主人公が、その彼女に小学校時代いじめをした背景には、
あまりに無垢で優しい、彼女に接することで、自分の中の醜い心に向き合わざるを得なくなったいらだちが、いじめに走らせてしまっていたようにも見えます。
「自分を愛せない人は、他人を愛することができない」
という有名な言葉があります。
この漫画と映画の主人公は、他人を真剣に愛することで、自分をも愛せるようになろうと懸命にもがいているようにも見えるのです。
まるで、贖罪として、自分の心を先に差し出すように。
自己肯定感をもてない。自己受容できない。自己嫌悪してしまう。これは現代の最大の病でこれを乗り越えるのは、個人では無理でひょっとすると友情でも無理で、真剣な恋愛がそれを溶かしてくれる最有力候補なのかもしれません。
今後も、この『聲の形』(声の形)は多くの議論と感想を呼ぶことでしょう。これを読んで、これを観た人はこの作品に会えてよかったと思うことでしょう。
人は、痛みを感じても感動できればその経験を尊ぶものですから。
映像が素晴らしく綺麗でした。その上でこれだけの人物描写がされていました。アニメーション映画としての完成度が高く、その上で上記のようなユニークで心に迫るメッセージ性のあるストーリーがよく表現されていました。
注 タイトルの「君に生きるのを手伝って欲しい」は映画の最後の方の主人公のセリフで、(ずっと伝えたかった)は私が付け加えたものです。
音楽も素晴らしいです。
サウンドトラック
牛尾憲輔。agraph名義でのソロ活動が高い評価を受ける電子音楽家。
叙情的なピアノ演奏が印象的なサウンドトラックを提供してくれています。
ピアノの旋律で、登場人物の心の揺らぎが表現されているように感じました。きちんと生きたいのに、揺れてしまうような思いが表現されているように感じました。
主題歌 aiko 「恋をしたのは」(ショートバーションMV公式ネット公開版)リンク
既に歌のうまい人たちがカバーしてユーチューブに何曲も何曲もアップされています。今はメジャープロに負けない歌唱力の人がたくさんいることがよくわかります。
それでも、この歌についてaikoの歌が一番に感じれられました。安定して一番表現したいものを表現できているように感じられたので。
aikoはこの漫画の熱烈なファンで、自身のコンサートのMCでこの”聲の形” の本一冊分話きったほどだそうです。元々恋愛の歌を歌うと日本で有数のシンガーがこの「聲の形」のためだけに作った歌はさすがの出来栄えです。これも多くの人に長く聴かれることになると思います。 『伝えたかったことは、今も、昔も、ずっと同じままだよ』 この映画にぴったりの歌詞です。作者にとっての最大のテーマは伝えられない思いにあるようなので。
【aikoインタビュー】映画『聲の形』の主題歌「心の底にある絶対変わらない愛の歌を書きたかった」
追記—2016/9/20—————-
明るい映画でも漫画でもないのですが、本当に悩んでいる人には、こういう作品の方が力をくれるハズです。はまりすぎると、辛くなるかもしれませんが。まるでこの映画に恋をしてしまったように。
追記—2106/9/30——-
聲の形は
君の名は。
と比較されること多いので,
君の名は。(辛口評価)”RADWIMPS”(再生回数ベスト40掲載):”おあいこ”じゃすまない”おしゃかしゃま””ふたりごと””有心論”の感性は”前前前世”から?カラオケまで制覇
この記事をSNSでシェア