健康と産業としての医療(国民皆保険を超えて)デジタルヘルス学術学会 北原茂実先生の講演からわかったこと
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北原茂実先生に初めてお会いしたのは1995年だ。
北原脳神経外科病院をその年に開業され、私の元妻が開業時のスタッフだった。
夜勤明けにバイクで迎えに行くと、「折角来たから、頭のCTでも撮っていくか?」と言われ、オズオズしている僕をみて
「何かあったらすぐ手術してやるから大丈夫だ。」と言われ、シブシブ頭のCTを撮ってもらうと、
「ああ脳が委縮しているね」
「エー」
「頭蓋骨と脳の間に少し隙間が見えるでしょ」
「ほとんど見えませんが」
「冗談だよ、普通の老化現象の範囲内だよ」
というやりとりがあり、よく覚えていた。素晴らしく腕の良い脳外科医で、ズバズバと言いすぎるから、大病院にはあわなくて開業するしかなくなったというような話も聴いていた。
初期の開業スタッフは、よく我家に来ていた。自宅のリビングに10人以上医療関係者が入って話し込んでいた。
それから23年、北原先生は、大規模で先進的な医療組織を作られていた。しかも、そのビジョンは当時から世界の模範となる医療を目指していたことが、分かった。
世界は変人が変えていくのである。
北原先生の講演から見えてきたこと
そもそも医者がなぜこういうことを(日本の医療を世界に輸出する等の大事業に関わっているのか等、北原先生のビジネスに全般に対して)やっているのかとよく訊かれる。
「クロネコは生き残れるか?」
いきなり、クロネコヤマトのビジネスの歴史から講演は始まった。
創業者は規制と訴訟を繰り返した(もとは郵便局だけが、宅配を認可されていたから)
安倍政権になってクロネコはたたかれはじめた。(行政にたてついてきたことと、アマゾンの台頭で労力が増えてブラックにな企業ってしまった。しょうがないのでアマゾンの仕事を断り、給料を上げたら、経営が厳しくなった。なんでアマゾンは料金あげを引き受けたか? 3社しかない、クロネコ、郵政、佐川 でもアマゾンは、自社でクローンも活用して自社で宅配を始めようとしている。
これによって、クロネコですら、存続がが難しくなりかねない状況となっている!
筆者追記———————
北原先生は規制と戦い素晴らしいビジネスをしてきた、クロネコヤマトですら、国内だけでは、アマゾンのような黒船がきて、一気にビジネスが危機を迎える例をだして、
医療だって、規制に守られてきて、それに戦って良い医療を提供できたところで、国内に留まっている限り、同様のことになりかねないんだよと、この出だしで、
聴衆が想像できるようにしてくれていた。
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GE, SANYO, SHARP等 歴史が長い優良企業でも難しい状況になった会社は増えてきている。
次の3つのうちで、一番健康状態のいいのはどれか? まず考えてほしい。
1.やりたいことを好きなようにやる人
2.世のため人のために努力する人
3.いつも人に親切にする人
どれが最も健康になれるか? 血液や唾液から調べた。
実は3番。 なぜかというと、1番2番 は自分のことに過ぎない。 3番だけが他者との関係、それが大切。
(面倒でも)他者との関係を大切にできることが、健康に一番プラスになるという結果が出でている。
ブルーゾーン Blue Zone とは何か?
90歳を超えて元気に働いている人の割合(普通は千人に1人) それが5人を超えるような地域 例 ギリシアのイカリア島 イタリアのサルジニア島
医療従事者はまず食事を調べた。 コスタリカも長生きで元気だが、一日900kcalしかとってない。何度調べても
Dan Buettnerの報告
全てのBlue Zone には 病院がなく 対人関係が良い
疫学はいい加減だという例えを話す ハワイの日系人の寿命が長く 2000年に日本人を抜いた。 純和風食事の人がガンで一番死んでいた。
(元気で長生きの原因を調べていくと、食べ物等から原因は見つけにくく、明確なのは、良い人間関係を老人になっても維持できる地域であるという共通点だけ)
国民皆保険 (国民会健康保険)が招いたもの
1.市民革命を経験していない社会
2.戦後の復興には役立った皆保険
3.結果、増幅された他者への甘えと国家経済の衰退。
参加者のほとんどが、国民皆保険は続かないと思っている。(ほとんどが医療従事者なので現場で理解しているだろうということ)
フランス革命の頃は飢饉が原因 (アイスランドの大規模噴火が原因だったので、世界的な天候不順で同時期に日本でも大飢饉が起きていた)
日本も同じころ飢饉だったが、革命は起きなかった。
日本はお金を持った人たちは、お代官さんに賄賂を送る。(越後屋 ヌシも悪よのう の世界)
江戸においては何が起こっていたかというと、巨大な倉庫を作って、有力が商人たちが、食料を備蓄していた。
近江商人が多く 3方良しを 昔から自覚していた。この人達は社会保障をしていた。
この人達のおかげが、市民革命はおきてない
明治維新はクーデターで 下級武士が権力をとったにすぎない。庶民の暮らしは変ってない。
国民皆保険は 戦後 餓死者が大量に出ている時にGHQから提案されて作られた。
日本の人口構成は世界の学者から 棺桶型と言われている。(逆ピラミッドの人口構成)
このままだと、日本の医療も衰退することは決まっている。
皆保険とフリーアクセスが同居している国はない。
アメリカはフリーアクセスだが皆保険は無理
日本はフリーアクセスにできない。
(情報を公開したら、その病院に集中するから。群馬の失敗している病院の情報も公開できなかった。)
(アメリカでは、医者ごとの手術の成功率とそれに応じた料金まで公開されていて選べる。これを日本人が見ると怖いと感じる。お金持ちしか、良い医療を受けられないように想像するから。ところが一長一短で、日本では、同じ手術で大量に死者を出しているような病院も大問題になるまでその情報は秘匿される(公開されない)。日本のように皆保険の国で情報を公開してフリーアクセスにしたら、患者が病院を選択できることで、不都合が起きる。 どこの病院でも保険点数に応じて同一料金にしているということは、医療の水準の差によって価格差がないからとんでもない歪が生じているということを言いたかったと思われる)
2030年 日本はどう変わるか?
1.急速に進む少子高齢化と一人暮らしの世帯の増加 40%以上
2.行き詰まる従来型の社会保障と求められる社会の構造改革
3.生活や医療に対する思考の変化
(病院と保険会社がグルになっているので、アメリカの場合、利益率をみて医療をやっていたが、最近5%を下回った。なぜかというと、ガンだとわかると病院にいかないという人が増えている。サプリメントが売れているのもそれをあらわしている。)
2017年に宙に浮いたご遺体の数は 引き取り手がいなかった。3万2千人 (そんないる)
八王子モデルの確率
Total Life Support Ssytem とヒーリングファシリティー システム
2030年一人暮らしの高齢者は東京の40%
デジタルホスピタル
デジタルリビングウイル
薬病気手術延命治療の履歴をもとにあった医療を提供
トータルライフサポート
デジタルリビングウィル(意志、遺言書)
あらかじめ登録しておいた条件での医療を受けられる、会員制のシステム
人口知能によるアドバイス
登録された生体情報による治療
プラットフォームビジネスである。
アマゾンがアパレルを売るならデータに基づき 原価率20%を80%に上げて販売できるようになる。
アマゾンとグーグルは医療はできない。プラットフォームは課題設定はできない。逆に答えがわかっても、プラットフォームはそれができない。
グーグルスピーカーは盗聴が目的ではなくて一番の目的は 声の変質で変調で 健康の変化を読み取ろうとしている。健康産業を狙っている!!!!
銀行もこのシステムに参加すれば、生き残れる。(トータルライフサポートに金融として参加しやすいのは地域の金融機関なので)
農業は、抗うつ、リハビリ、社会復帰にも使える。
デジタルホスピタル 八王子の平山城跡に作った。
レストランはきれいで 注文に応じて作って出す 刺身もアルコールもでる。レストランで社会性を取り戻せる。
アニマルセラピーもやっている 凄い効果がある。
グリーンイグアナは知的生き物で トイレをしつけられる。
ITはNECと全面協力している。 Co-Creation ROOM 顔認証システム
患者を回復させるには 少しでも行動量を増やす。
一番儲かるリハビリテーション病院は長期中印になるので、回復しないことになる。
本当に治りたい人の集まる病院は 短期間で退院できる病院
新卒の医者を集めると治療能力なくて優しいから、病院に長期間遺体だけの患者と相性がいい
歩容認証システム
ベテランの医者は患者の状態を見分けられるが 理由を自覚できない。
歩き方か、匂いか、全体の雰囲気の何かを感じているがわからない。
音声による記録、ガイダンス これができると カルテを書かなくてよくなる。若い医師にはカルテの書き方が悪いと怒られて書けなくなっている人がいる。
申し送りもしなくていいようになる。
一番優れた医療従事者の意見が採用されるようになる。
医療のIT化のSTAGE分類
ステージ1
従来型の事務作業の合理化にとどまるもの
ステージ2
航空機に見られるような自動操縦システム
ステージ3
IT-AIの力を借りて医療と社会をより理想的なものへ進化させること(社会の不条理を変えていくこと、選挙、役所の手続き、その他)
流通で見ると
スーパーマーケット
コンビニ(情報端末)
医療では、流通に何も起きてない。
人間の周波数はもともとは低い 病院の機械の周波数が高い
帰路にに残らないのが問題
自動操縦にすると、何が起こったかはわかるし
トイレのデータまで全部 集める。
人間は会話を収集する。それをコンピューターがわかる言葉に置き換える。医療用語に置き換えるのが大切
理想は、人間の言葉から医療用語でわかるもののみをひろう 場合によってはわからなかったら聞き返して、言葉にして AIに投げるようにする。
下手すると マインドコントロールにもなる危険性もあるが、進歩に必要と考える ステージ2
医療のIT化がもたらすもの
1.諸外国に比べて大きく立ち遅れた 日本医療のIT化の急速な推進
2.ハードとソフトの一気通貫のビジネスモデルの成立
例 コマツのトラクターはGPSとドローンで山を自覚して望んだ形に削れる。 炭鉱の露天掘りは小松が80%シェア。
部品はドローンは中国製だけど、それができるハード トラクターは現時点では小松しか作れてないから
3.地域限定の命と健康に関するビジネスも包含したブラっとフォームの成立
日本企業への提言
1.ものつくりから離れることの危険性
例 NECは何も作ってないでICソリューションと言っている、がとても危険、御用聞きにしかなれないから
2.IT SOLUTIONを看板に揚げるには
3.活かせてない資金力 マンパワー
4.プラットフォームビジネス、医療
メンテナンス及び 死角ビジネスの強み
社会保障や病院がお荷物だという考えは古い、間違い、元々は健康で、楽しく生きられるのがポイントだったから。自動車産業は元々は本筋のビジネスではない。
2030年 アジアはどう変わるか
1.まだ当分続く人口の 増加と都市化率の増大
2.実現する先進国並みの豊かさと 同時に広がる経済格差
3.急速に進む少子高齢化
85億人 49億人がミドルクラス。 アジアが60%以上 日本は完全にアジアに埋没する。
サンヨーはハイアールに買収されたあとに 白物家電を復活させてアジアで売りまくって 急拡大。
HHRD カンボジアHHRD ODAに変わる日本の支援
リハビリテーション 室 一時間で40ドルで 予約が 2か月待ち 最初は マッサージとどう違うのかと言われた。
結果にコミットする 医療
ラオス脳卒中センター
ブルネイの手術室は世界で最も進んだものだった。
ここがアジアの医療の拠点になろうとしている。
ブータンは再生医療等やリハビリ、医療技術者がメインになる。
ブータンは グローバルスタンダーど は考えてない、自分たちをはっぴー
未来の医療
1.重厚長大型の医療から再生 免疫療法尾主体とする医療へ
2.狭義の医療の現場は
よりテクノロジーの世界に近いものに
ノーベル賞受賞者・本庶教授
「オブジーボはこれが私の業績と思われては困る。」
ガンは結局は全部免疫でしか治らない!!!
異形成が強いと危険だが 免疫が上がると、治る (黒色腫 メラノーマ)
オブジーボは薬で免疫を復活させている、リミッターを壊しているので、トランスミーッターをこわす。
免疫療法は悪性度の高いガンに効果的だが、 免疫療法は 本来だけどオブジーボはその一部を製品化したに過ぎない。
思いは必ず実現する。
あるべき医療
1.本当に必要なのは人に優しい医療
私は最初に質問した
「心が大切とのお話だが、そのデジタル化はどうすればできると考えるか?」
北原先生は即座に軽く苦笑いしながら
「心のデジタル化何てできるわけないじゃないか。
スヌーズレン(匂いをかぐように心を感じ取ることはできる 心のデジタル化は難しいが」
と答えてくださった。 これだけ、賢く、ズバズバと発言する北原先生をして、心のデジタル化は無理というところに、物足りなさを感じた。
出来そうにないことに、挑戦し続けてきた人なのに。
高齢者は欲しいものない、一番の関心事は老後の不安。
日本の経済の復活は 高齢者が金出しても欲しい物、サービスを用意すること
医療は産業化しないといけない。 このままだと、医療従事者はワーキングプアになる。
個人の医療情報を国や行政には渡さないが、医療機関には渡すので、医療機関には貴重なデータが大量に保管されている。
(ここに宝の山があるといことを指摘したかったらしい)
五十嵐健佑先生も素晴らしい講演をされていた。
デジタルヘルスの背景
内科(薬) 外科(手術) で半分以上の病気が何とかなるようになった。
それ以外にデジタルヘルスで改善すべき部分が増えてきた。 病院にくれば何とかなることが増えて、通常の日常生活での改善が必要になった。
救急医療を大量に見てきて人は何で死ぬのかわかった。
ガン 心疾患 肺炎(脳卒中の嚥下障害とか) 脳卒中 老衰その他
最先端から一周まわって
減塩 禁煙 ウォーキング 脈チェック
をなんとか担っている
いきなり一次予防で行こうと決意(五十嵐)
2014年 ハートリズム 心源性脳卒中
DAPT(Dual Anti-Platelet Therapy) が中断されて、問題になる人が多い。
パイロンPL顆粒 の薬が転換点
治療の主体は患者サイドに変わった。
ユーザーにとって望ましいユーザーエクスペリエンス を提供すること
現在の治療的価値ではなく、将来の要望的な価値が大切になる変化が起き来た。
筆者追記
健康は自覚的努力と、他者への献身のバランス
北原先生が、世界の長寿地域の傾向で指摘されたように、人は不思議なことに、他者に貢献してその関係の中に居場所のある期間が長いほど健康である期間が長い。
そういう生き物である。それが栄養等で割り出せないほど、健康寿命との相関が高い。それが一段と明確になってきている。
国民皆保険は、素晴らしいシステムだったが、もう成り立ちえない。理由は明確だ。日本では1946年前後に年間200万人以上人口が増え、2018年の出生数は100万人以下、
しかも75歳を超えると、医療費は平均して3倍以上になる。ボリュームゾーンが、他の世代の3倍以上一人当たり医療費を使うようになるまであと5年。
それぞれの個人が自分の健康に責任をもって、なるべく医療費を抑制できるようにすることは必須のこととなる、あらかじめ見えている未来なのである。
そして、その時、高齢者の半数近くは一人暮らし、どうやって他者との関係を維持するかが、死活問題となってくる。
それも楽しい人の方が、他者との関係は維持できるから、深刻になってもしょうがないのであった。
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北原茂実先生です。ご訂正くださいませ。
ご指摘ありがとうございました。修正しました。