トークンエコノミービジネスの教科書 著者 高榮郁(コウヨンウ) 書評と感想
トークンエコノミーについてポイントをわかりやすく解説してある本でした。
この本では冒頭で
Contents
”トークンエコノミーとはデジタル通貨による新しい経済圏のこと”
とわかりやすく言い直してくれています。共通の理解を広めて正しい議論をするためにもこういう説明大切です。
トークンエコノミーの中のトークンはデジタル通貨のこと
のことになります。コンピューターのネットワーク上でトークンがなぜ最近まで作りにくかったかというと
デジタルデータは簡単にコピーできてしまうからでした。
ブロックチェーンの利用で脱中央集権のトークンが作れるようになったことで、
その問題が解決されて中央集権化された、中央銀行しか発行できなかった通貨に似たデジタルにやりとりできるトークンの発行を多くの人ができるようになりました。
それがこの本のようにトークンエコノミーの重要性が語られることが多くなった背景にあります。
またデジタル通貨はプログラム可能なので、一般に言われる
スマートコントラクト
という今までの契約をより便利にした機能を組み込むことができるます。
この機能も今までのドルや円の法定通貨では実現できなかった経済圏作りに役立ちます。
私たちは、例えば日本に住んでいれば当たり前のように、日本円のやり取りで経済活動に参加して、
ほぼ全ての経済行為がそれで済んできていたので、それを疑問に思うことすらありませんでした。
ただ賢くて大きな企業はポイント制度を利用することで、ユーザーを自分の経済圏に呼び込みやすくして来ています。
この本の中では
アマゾンポイントによるライフタイムバリュー(LTV)への効果
が例として挙げられています。
アマゾンのポイントがたまっていたら、同じものを他と同じ価格で買えるなら、ポイント分得するアマゾンで買い物しますね。
これもトークンエコノミーといえます。この場合はアマゾンポイントがトークンになります。
この本では最初のほうで、ポイント制度の事例を紹介することでトークンエコノミーは実はもう始まっていることの説明から読者を導いていて巧みです。
現行のポイント制度はトークンエコノミーの性質の一部利用ですが、この導入でその後がよりわかりやすくなっていました。
次世代トークンエコノミーを生んだビットコイン
ビットコインこそ最大で実績のあるトークンエコノミーです。重要なことなので、その説明にも丁度10ページ使われていました。
ビットコインを一歩下がって全体を考えてみると、技術以上に、最初の論文から巧みなトークンエコノミーの仕組みが作られていたことには改めて驚かされます。
マイナーという、新しいビットコインを報酬としてもらうために、競う人達、全体のプロトコルの改善に努める人達、ビットコインを買って、投資か投機目的で参加する人達、ビットコインでしか買えないもの(例 VALUというトークンはビットコインでしか買えません)。
それぞれの参加者が自分の利益、やりたいことをするためにビットコインに関わることでビットコイン全体のトークンエコノミーが発展するように最初から作られています。既に誕生から10年以上たち、マウントゴックスのような大規模なハッキング事件も起こしながらも、中央管理者のいなまま、今も継続してきています。ビットコインこそがまさに一番実績のあるトークンエコノミーの事例そのものであることが説明されています。
さらに付け加えれば、同時にビットコインのブロックチェーンこそが、一番実績のある大切なパブリックブロックチェーンそのものなのです。
ブロックチェーン、トークン、コミュニティー、全てが一体となって機能してこそのトークンエコノミーであることも、この部分を読むことで、詳しい人でも再認識することが出来るように書かれていました。
イーサリアムのスマートコントラクト
についても5ページ書いてありました。トークンの多くはイーサリアムのERC20というプロトコルを利用して作られていることは書かれていませんでしたが、スマートコントラクトにより、ビジネスの可能性が拡がることが書かれていました。スマートコントラクトだけでなく、独自の性格をもったトークンを作成できることもチャンスであること、それを活用した会社、
メディブロック社、コインアス社
の事例もインタビュー記事として巻末にまとまっていました。
プルーフオブステーク(POS)とプルーフオブワーク(POW)
についての記述もありましたが、取引システムという言葉で説明されていて、わかりやすくするために正確性を多少犠牲にせざるを得なかったのかもしれません。
これはコンセンサスアルゴリズム(合意形成システム)でブロックチェーンの肝になる部分なので取引システムだけでは誤解を生みかねません。
またPOSがPOWより一部の者に権力が集中しない利点があるという説明がされていましたが、これも論点の一つで、わかりやすさのためにそう書かざるを得なかったのかなと思いました。
日本の資金決済法等の規制との兼ね合い
これについても記述されていました。通貨発行権は国の権力の根幹となっています。トークンエコノミーが国をまたいで発展していったら、国の位置づけは相対的には弱まるはずですから、その面からも規制を簡単には緩められないのかなとも、私は予想しています。
ただ、それ以上に大きいらしいと思っているのは、仮想通貨やトークンエコノミーを語り集まってくる人には、それを使って世の中をより生きやすい良いものにしていこうという理想を持つ人と、これを使って人騙して儲けてやろうという人がいて、法律はそれらの人を同じルールで縛って問題が発生しないようにするしかないということがこの分野の進展を阻んていると思っています。
例としては、仮想通貨とかトークンのことは全然知る気はないし、一ミリも勉強する気はないけど、どれが上がるのか教えてという人と、そういう人に自分に有利な情報を与えてお金を集めて逃げようとする人です。こういう人達も規制できる法律を作ると、良いことをしようとしている人も身動き取れなくなって、この分野の進歩を阻んでいるように見えます。
この本では、法定通貨との交換を一切考えないトークンなら法律も適用されないといったことも記述されてました。
そういうことも考えるしかないほど、規制のハードル一般の人や企業には上がってしまっています。
取り上げられていたトークンエコノミーの実例
Steemtはトークンエコノミーによる次世代SNS?
Steemitというトークンエコノミーを活用した良い記事を書くとトークンで報酬を得られる仕組みについても説明していました。
概念の理解には役立ちますが、Steemitも現在は国内でのユーザー数は限られています。
その大きな理由になっていると私が考えるのは、トークンエコノミーの根幹に関わることで他で書くつもりです。
要はトークンエコノミーはまだまだこれからの段階でチャンスも大きいが大切に育てる必要のある段階にあります。
Steemitの場合は、自分のコンテンツの所有権を自分が確かに所有していることは例えばFaceBook やLineと比べて大きなメリットで確かに将来はそうあるべきなのです。
アイドルトークン(アイドルとファンを結ぶトークンエコノミー)
ALIS(Steemitと似た日本初のコンテンツ配信方トークンエコノミー)
PoliPoli (政治討論の行えるトークンエコノミー)
本全体からトークンエコノミーについて思ったこと
トークンエコノミーを始めるための技術は整ってきている。
問題は法規制なのだが、これは、日本では少なくとも当面は法定通貨との交換のないトークンでゲームのように楽しんでやるトークンエコノミーしか実現できないのかなということ。
また、何より改めてビットコインの脱中央集権のまま持続成長可能で現実的で実際に10年以上稼働したトークンエコノミーから学びたいなということでした。
その経済圏の参加者にはただ、コンピューターリソースを提供して儲けたいだけの人もいる、そういう人もメンバーの必要な構成要素として最初から想定されている。
今ままでのようにメーカーと消費者というだけだと、もうここからの進歩は想像がつくような世の中になったように思う。
例えばずっとうまいインスタントラーメンとか少なくとも昔ほどは求めている人は少なくなって、そのラーメンの新しい食べ方とか、そのラーメンのファンの人同士で話してみたいとか、興味の焦点がずれてきている。それに対応するにはトークンエコノミーがあっていると思う。メーカー、消費者でというだけでなく、その製品、サービスに関わる全ての人が、その製品 サービスをより広める、改善するために、貢献した人にトークンが与えられることで、経済も気持ちもより活性化するだろうか。
そうやって想像すると、トークエコノミーは現在あるものでは、宗教やコミュニティーのような集団と親和性の高いものだと改めて思わされました。
著者 高榮郁(コウヨンウ) インタビュー
私;この本書こうと思われたきっかけは?
高さん:不格好経営(DeNA創業者 南波さんによる創業期)をよんだからです。
私:あれは創業期だったと思いますが、Webビジネスが拡がっていく頃の話にブロックチェーンが拡がっていく今を重ねてそう思われたのでしょうか?
高さん:まあ、ブロックチェーンでビジネスするための経験よりまだどう考えてそれに臨むかを書こうとしていたらタイミング的に、トークンエコノミーでまとめると良いという形になりました。
私:最初にこれだけわかりやすく全体を見渡せる本を書いてもらったの貴重です。私も全体の理解が深まり助かりました。本当に良い本でした。ありがとうございました。
私もトークンエコノミーで個人が活躍するためのコミュニティーKUMA FAN
を運営しています。このリンクから買って下さった方にはこのコメントで質問に回答させてもらいます。抽象的なことをわかりやすく説明してある本で
将来、トークンエコノミーで成功した人が昔この本を読んだことがきっかけになったと発言するかもと思っています。
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