書評と考察:Afer Bitcoin 日本銀行と各国中央銀行に対する意見 著者:中島真志
Contents
- 1 After-Bitocoin
- 2 成毛真氏激賞
- 3 ビットコインのブロックチェーンについて本の理解を助けるために
- 3.1 ”ひとつ前のブロックと確認するためのニックネームを含みますよということです。”
- 3.2 1.ハッシュ値
- 3.3 2.ビットコインの生成以来の全取引データ
- 3.4 3。ナンス
- 3.5 次のブロックチェーンのためにハッシュ値の頭の数字に何桁0が並ぶかをあらかじめとりきめておき
- 3.6 国家権力でも止められないわけです(これがこの本でも大きな意味を持ってきます)
- 3.7 1.ダーティーなイメージの広がりと信頼性の低下
- 3.8 2.保有、採掘、取引構造の偏り
- 3.9 3.発行上限やリワード(マイニングへの)半減の仕組みの持つ弊害
- 3.10 4.ブロックサイズ問題と分裂騒動
- 3.11 5.仮想通貨に対する規制導入の動き
- 3.12 6.健全なコミュニティー作りの失敗
- 3.13 7.バブル的な兆候
- 4 ビットコインとこの世界初のブロックチェーンの中央管理者なしで信頼が維持される仕組みそのもの、
After-Bitocoin
しっかりした内容で、帯には私が26年前最初に面接してもらった
成毛真氏激賞
と書かれていて、一読直後ははなるほどと思ったのですが
後から疑問が沸き上がってきました。
282ページのうちの最初の100ページ余りをビットコインにあて
基本概念と問題点をわかりやすく提示しています。
ビットコインのブロックチェーンは初めて実際に2009年の頭あたりから運用されてそれが継続して来ています。
ビットコインのブロックチェーンについて本の理解を助けるために
それぞれのブロックには、ひとつ前のブロックのハッシュ値がふくまれます。
このハッシュ値というもの、現実世界でイメージしやすいのはニックネーム、ハンドルネームです。
本名を省略したものが多いですが、ニックネームから本名がわからないこと多いですね。
ひとつ前のブロックのハッシュ値を含むとは
”ひとつ前のブロックと確認するためのニックネームを含みますよということです。”
ビットコインのブロックチェーンの場合は、SHA256(シャーニゴロ)という暗号関数で生成されたニックネーム(ハッシュ値)なので厳密なものです。元のブロックの文字を一文字変えただけで、全然違うニックネーム(ハッシュ値)が生成されます。
そしてビットコインのマイニングとは、以下の3.のナンスという値を世界で最初に割り出した人にビットコインが割り当てられるということに他なりません。
1.ハッシュ値
2.ビットコインの生成以来の全取引データ
3。ナンス
ナンス? なんざんす? このお名前なんざんす?
それが一回だけ使われる意味がない値です。????
なんのために?
次のブロックチェーンのためにハッシュ値の頭の数字に何桁0が並ぶかをあらかじめとりきめておき
そんなブロックを生成するたまのハッシュ値探しを、ビットコイン欲しさに世界中で多大な電力とコンピュータリソース使ってやっているのです。
省エネなんか、地球温暖化なんか、2酸化炭素排出量なんか、金儲けの前では関係ないんですね。
ただ、そうやって膨大なリソースを使わないと生成できないものが2009年の頭から累積しているのでそれは偽造しようとしたら大変な作業となり実質できないということになっています。
それがP2Pで運営されていることもこの本で図も含めて解説されています。
P2Pはネットワーク上のコンピューターが対等の立場でつながり、このブロックチェーンの情報をそれぞれが持ち、同期をとっています。
そりゃー
国家権力でも止められないわけです(これがこの本でも大きな意味を持ってきます)
本には色々かいてありますが、ビットコインの通貨としての最大の問題は発行上限が決められていることです。
通貨は基本緩やかに堕落する方が経済循環にはいいのです。
緩やかに堕落するとは緩やかなインフレが続くということです。
持っている通貨(お金)の価値が下落するからこそ、ああ来年になったら、マンション値上がりするかもしれないし買おうとなるわけです。
来年まで待っていれば 値下がりする(通貨(例として日本円としましょう)が上がる)とわかっていたら、お金をもっていようとしますね。
発行上限が定まっていない通貨ですらこうなることがしばしばあるわけですから、
発行上限の定まっているビットコインではそれこそ、持ち続けていれば希少価値であがると期待する人が増えてしまうわけです。
当然、通常の売買には利用されにくくなります。それがビットコインの”通貨”としての最大の問題点でしょう。
ところが”資産”としては魅力的にも見えるわけです。だから急騰したのですが、そもそも株のように利益でて配当があるわけではないので、価格を算定する基準がありません。
この本では
1.ダーティーなイメージの広がりと信頼性の低下
2.保有、採掘、取引構造の偏り
3.発行上限やリワード(マイニングへの)半減の仕組みの持つ弊害
4.ブロックサイズ問題と分裂騒動
5.仮想通貨に対する規制導入の動き
6.健全なコミュニティー作りの失敗
7.バブル的な兆候
を問題点としてあげております。それは同意しますが、
ビットコインとこの世界初のブロックチェーンの中央管理者なしで信頼が維持される仕組みそのもの、
その価値に懐疑的なスタンスだけで終わってしまい片手落ちです。
それこそが革新的価値でビットコインとブロックチェーンの中心となる目標だったのですから
それを達成するためにこそ、この仕組みは考案されたのですから。
この本では題名のとおり、ビットコインの後、ブロックチェーンが本物の影響力の強いプロジェクトとして
各国中央銀行で検討されて既に実証事件に入っている国もあること。
オープンなブロックチェーンではセキュリティー確保が困難なのでクローズなブロックチェーンで運用されるべきことが
説得力ある形で説明されてそうなのかなとも思ってしまいました。
しかも賢い方々がきちんと議論して検討して進められていることが説明されています。
それでもおかしいと私は思うのです。
国や、特定の権力に依存しないための通貨のような仕組みとして生まれてきた仮想通貨と、
特定の国の中央銀行の発行する仮想通貨もどきは、根本の発想が違います。
この著者は日銀出身なので、どうしても中央銀行の発想に偏っているようにも見えるのです。
例えば、ビットコインのマイニングには確かに電力、コンピューターリソース等多大なエネルギーが消費されています。
クローズできっちり設計された中央銀行により発行された仮想通貨には、技術も、法的拘束力も確からしきものが生じるのでしょうが、
じつはそれを運用するために、中央銀行の職員の人件費等のコスト等がかかっていますが、それはこの本では触れられていません。
またビットコインの論文はリーマンショック直後発表されていますが、リーマンショックでは世界の金融機関がマヒ状態でした。
2018年2月現在はリーマンショック後の景気対策のために各国中央銀行から異次元の金融緩和が継続されてきたおかげで
根本にたちかえれば、法定通貨の信頼も本当は怪しいものになってきています。
それについてはこの本は一切触れていないので、片手落ちなのです。
国、政府、中央銀行、簡単に権力を手放さないでしょうが、法定通貨の仕組みそのものが問われているのだと思います。
その時に技術論だけ論じ、クローズなブロックチェーンでやっていく未来のみを通貨にあてはめて想定するのは無理がありました。
仮想通貨取引所は金融庁登録事業者で最大手のビットブライヤーが安心感高いです。
コインチェックは結局登録できないままでした。
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