書評:君たちはどう生きるか 心が必要とするもの
この本は小学生の期間ずっと学校の図書館だけでなく、
教室にも置かれていた本でした。
大切な本に思えて、自分でも50歳まで保管していたにも関わらず、
あまりに失敗の多い人生で、この本を捨てました。
皮肉なことにそのあと大ヒットして読み返してようやくわかってきました。
歴史は螺旋階段のように繰り返してきました。
約80年前に出版されたこの本が今これだけ読まれているのは、
80年間ないがしろにされてきた、
日本人の心の核から呼び覚まさずにいられないものを持っているからです。
人間として、何が正しいことなのか。
人間として、何が立派なことなのか。
友に対してどうあるべきか、本当にそうできるか。
この本に書かれている内容のどれにも、無駄がなく、大切で、
とても要約できません。ぜひ本をとって、自分の気持ちを素にして読んでみて下さい。
感想
人には本能的に大切にしたい心が備わっています。
それは
思いやり、社会に役立つこと、人に好かれること、防御本能により他者を守りたいと思っても守れないことがあること。
お父さんがおじさんに病床で託した言葉は
「潤一に立派なものになってほしいと思っています….. 人間として立派なものに…..」
そのための言葉を残してあげられない自分に代わって、そんな本を作ってほしいと
おじさんに頼みます。
この80年間、戦争に勝つために、競争で勝つために、お金を儲けるために、
楽しむために、色々な価値観はあったでしょうが、立派になることはどんなことでしょう。
おじさんは失業中ですがそれを少しも恥じていません。
一生懸命、コペル君に語りかけ、ノートに大切なことを書きます。
人間として何が大切か、何が立派かを、語りかけ、問いかけ、少年の成長をうながします。
それは一定の型にはめる行為でないのは、タイトルからも明らかです。
こういうことが大切だと教えながらも、自分で考えることが大切だと伝えます。
最後には読者に
「君たちはどう生きるか」
と問いかけて終わります。
それは自分で考え抜いて、自分にとっての正しいことに忠実であれということだけでなく、
考え抜いた末に感じたこと、それに忠実であれとも教えています。それが立派なことだと。
何故、2017年、2018年を生きる日本人の多くがこの本に涙がでるほど感動してしまうのでしょう。
それは、自分の人生で、大切にしたかったけど、大切にしてこれなかった、心が本当に欲する大切にしたいものを心の中に蘇生させてくれるからです。
私は8歳の時に父をなくしました。昭和一桁生まれだった父は、この本に出てくるお父さん、おじさんと似た雰囲気を持っていました。
昔の日本人は、お金を儲けること、立身出世すること、要領よくいきていくこと、そんなことよりも大切な生きるための心の芯に強くある規範となる価値観を持っている人が多かったのだと思います。私の記憶にある父はそういう男でした。
その父がこの本を通じて私に語りかけてくれるのです。
「お前は生きている。何回失敗をしても、お前にも立派だったところがある。頑張れ。立派になることをあきらめるな」 と
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