金融庁:仮想通貨交換業等に関する研究会 第一回 傍聴
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霞が関の金融庁で第一回 仮想通貨交換業等に関する研究会が開催された。2018年4月10日
傍聴したので、ここに金融庁の議事録には記載されないと思われる点等、自分の気が付いたことを記しておく。
以下の金融庁のリンク先に配布された資料がある。議事録もアップされるとのことである。
「仮想通貨交換業等に関する研究会」(第1回)議事次第
https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20180410.html
資料1
「仮想通貨交換業等に関する研究会」メンバー等名簿
この研究会への真剣度が伝わるようなメンバーである。
法律の専門家をメンバーに多く入れ、オブザーバーは関係機関をバランスよく選んでいる。
座 長 神田 秀樹 学習院大学大学院法務研究科教授
メ ン バ ー
井上 聡 弁護士(長島・大野・常松法律事務所)
楠 正憲 Japan Digital Design 株式会社最高技術責任者
永沢裕美子 Foster Forum 良質な金融商品を育てる会事務局長
オブザーバー
望月 昭人 一般社団法人全国銀行協会企画委員長
山内 公明 日本証券業協会常務執行役自主規制本部長
山﨑 哲夫 一般社団法人金融先物取引業協会事務局長
黑岩 操 警察庁刑事局犯罪収益移転防止対策室長
河内 達哉 消費者庁消費者政策課長
竹林 俊憲 法務省大臣官房参事官
堀田 秀之 財務省大臣官房信用機構課長
福本 拓也 経済産業省経済産業政策局産業資金課長
山岡 浩巳 日本銀行決済機構局長
また資料には出てないが、金融庁から総務企画局から9名 監督局から2名参加している。金融庁が事務局なので、実際は一番のキーになると思われるが、資料には名前は出てこない。
会場では 配席表があったが、これは資料としてはアップロードされてない。
長い長方形のテーブルの長い辺の片側に金融庁のメンバー、中心に座長
その対面にメンバー、両端にオブザーバーが配席されていた。
資料2
事務局説明資料
https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20180410-2.pdf
マネーロンダリング テロ資金供与対策とICO対策が強調されている。
コインチェックはファンも多く、ベンチャー企業として良いものを多く持っていたから大きな成長をしたハズだ。
ところが、この分野で管理体制が甘いまま、月間取引金額が3兆円までもいってしまうと、世界の安全に対する脅威となりかねない。
500億円分の仮想通貨がテロリストに奪われていないとも限らず、規制当局としては仮想通貨業界の育成のために甘くしてきたかもしれない規制を今までより厳しく対応せざるを得なくなったのであろう。
またICOについては、メンバーからも意見として出ていたが、そもそも日本で規制を厳しくしたら、海外に行くだけのことであるとのメンバーからの発言もあった。
ICOは玉石混交の世界で9割詐欺だとしても1割、世界をより良いものにするほどの可能性を秘めたものがある場合、それを日本だけ厳しい規制をかけておくことが国益にかなうかは疑問があるから、このような研究会が行われたのかと思った。
資料4ページに
改正資金決済法(2017年4月施行)での仮想通貨の定義
(1)仮想通貨
①以下の全ての性質を有する財産的価値
a.不特定の物に対し対して代価の返済に使用でき、かつ、不特定の者を相手に法定通貨と相互に交換できる
b.電子的に記録され、移転できる
c.法定通貨又は法定通貨建ての資産ではない
このように法として仮想通貨に定義を与えることできたのは日本が初かもしれない。(確認できないが)
ページ6
2.資金決済法や金融商品取引法の適用
この
(2)金融商品取引法の適用
ICOにおいて発行されるトークンが、収益分配型で会って、かつ、下記①または②を満たす場合、当該トークンは金融商品取引上の規制の対象外となる。
① 法定通貨で購入されること
② 仮想通貨で購入されるが、実質的には、法定数化で購入されるものと同視されること。
私の考え
仮想通貨事業を育成させるには、金融商品取引法の対象外にしておく方がメリットがあるとみている可能性が高い。
さらに、法定通貨での取引を仮想通貨を形式上利用するだけで、抜け道とされることは許さないことを②で規定している。
さらに②は曖昧さを含有しているので、金融庁側に裁量権を残すことができると思われる。
これを適用して、昨年の6月ころから爆発的に注目されたのがVALUであった。
これを適用してもらうことで、個人の株式上場にも例えられたVALUの発行を
金融商品取引の対象外とみなしてもらうことで、VALUは立ち上げることができたのである。
金融庁は、仮想通貨に関わるビジネスに、育成と規制の両面が必要なことを最も理解し、
その具体的な規制方法までこの段階で作っておいてくれたのではないだろうか?
資料3
仮想通貨取引についての現状報告
https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20180410-3.pdf
特に注目される点として 私は以下をピックアップする。
1 仮想通貨の取り引きは2017年の後半から急拡大していること。
2 証拠金取引と信用取引の違いを信用取引にのみ期限があるとして説明していること。
3.平成26年度 現物取引 24億円 証拠金・信用・先物(レバレッジ)2億円だったものが、平成29年 12兆円 56兆円と拡大していること。
4.ビットコイン取引の約6割が日本円で行われていることから日本の投資家が6割と予想されること
この資料の説明は奥山氏が行い、質問にも答えたが、2点、メンバーと金融庁の心証を悪くしたのではないかと思った点があった。
1.19ページ、20ページで年代別の取り引き割合を、現物の場合、レバレッジの場合でグラフでも説明している。
株等と大きく違うのは、30代とその前後が取引の中心だということである。
ところが、50代、60代はレバレッジ取引だけをみると、現物に対しての割合は多い。
奥山氏はこれを、この世代はレバレッジ取引への理解があるという説明をしたが、
これだけ乱高下している仮想通貨をレバレッジ取引するとは理解が足りないことを表しているに違いなく、
その結果も、取引業者として熟知しているにちがいないのである。
奥山氏はマネーパートナーズというFX業者の代表なので、レバレッジ取引はほとんどは悲惨な結果を招くことを知り尽くしているハズなのに、そのような説明をしたようにしか思えなかった。
もう一点はメンバーの加藤教授が、取引所から仮想通貨を引き出して自分のウォレットで管理している人の割合、直接ブロックチェーン上に自分の資産を持つ人の割合を訪ねた際に、敢えて見当違いの回答をしてはぐらかしかけたようにみえたことである。
すぐに座長にも正され、回答をし直したが、特定の意図によって誠実に回答をしない印象を残してしまっていた。
資料4
ICO(Initial Coin Offering)のご説明
https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20180410-4.pdf
資料の中で片手落ちに思えてしまったのは、ホワイトぺーバーについての言及が少なすぎることである。
ICOの評価は現状ホワイトぺーバーを精読するしかなく、それによって、確実に成功するICOの判断は困難でも、
成功の可能性がみあたらない、ICOの判断にはある程度役に立っている。
また規制する場合は、ホワイトぺーバーの内容が実行されるか否かについての強制力をもつことでICOの実態を改善できる可能性があるとおもわれる。ホワイトペーパーの内容をトレースするようにすべきでないかと発言してくれたメンバーが一人いたが、それ以上の発展はなかった。
感想
メンバーから資料の内容について、的確な質問等がなされ感心した。
ただし、この分野の適正な育成を考慮した発言はあまり多くなかった。規制を強化してこの分野の成長を止めてしまうことのおそろしさについて考慮して発言している人がいなかった。メンバーは知見のある人が多いので、それらの発言をもっとできたものと思われるので次回の研究会に期待したい。
余談
これだけのメンバーがそろっているので、研究会終了後に挨拶をして人脈を作ろうとしている方が多かった。マスコミは最初に写真だけ取って部屋から出された。ビットフライヤーの社長が、メンバの方々に名刺を渡して丁寧に挨拶しているのが印象的だった。それだけこの研究会が会社の将来にとって大切だと認識しているように見えた。
私は、誰にも挨拶しないで帰るつもりだったかが、帰り際トイレ近くで、どれだけのユーザーが自分のウォレットで管理しているか質問された東大の加藤教授と出会ったので、コインチェックの事件以来、ハードウォレットというものが売れまくっていること、割合はわからないけどリテラシーの高い人ほどそのように管理をしていることをお伝えした。 他にも少し話したところ、名刺を下さった。(私は名刺がなかった)申し訳ないので、メールを送ったら、実務面のことを今後も教えてくださいとすぐに返信を下さった。
どの分野でも、一流の人は腰が低い、自分より総合的には遥かにわかってない僕からも何かを学ぼうとする。そういう方々がメンバーを構成し、日本がこの分野で先陣を切って、世界一公正な仮想通貨、ブロックチェーンの市場、環境を整備してくださることを願っている。
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